好奇心で生きてる

短編や書きたいことをつらつらと。

カラフルノート。【詩】

赤いボールペンでハートを描く。
その下に、私の名前とあなたの名前を書いてみる。
「結構バランスいいいんじゃない?」とか思ったりして。

 

青いボールペンで家を描く。
間取りまでしっかり描いて、こっちは私の部屋、そっちはあなたの部屋、あっちはリビング。二階は…。
紙の上の小さな家は、夢のお城より輝いて見えた。

 

緑のボールペンでカフェを描く。
一度だけ、あなたと二人きりで行ったカフェ。あのあと私は何度も一人で通ったけれど、あなたが来ることはなくて、カフェは潰れてしまった。一緒に飲んだカフェオレの香りを、私は忘れられない。

 

黒のボールペンであなたを描く。
もう二度と会えないあなた。
遠くからちらりと見えたあなたは、私の知らない人とふたり、幸せそうでした。
ノートはこれで最後のページ。

 

ノートを捲って一番最初のページを開く。そこには赤いボールペンで描かれたハートと、私の名前と、あなたの名前。
このノート一冊分の、思い出でした。
何十ページのそのすべて、あなたとの毎日がありました。カラフルな日々でした。
ピンクのボールペンの日もあった。黄色い日もあった。オレンジの日もあった。
どれもこれも、素敵な毎日でした。
ありがとう。

赤いハートに涙が落ちて、二つの名前は滲んでいった。