言葉の消費期限【短編】
言葉が腐るのはいつからだろう。
吐き出された瞬間に、もうその言葉は崩れ落ちて、なんの意味ももたなくなるのだろうか。
「ねえ、私のこと好き?」
「好きだよ」
そんなやりとりを、私はなんど繰り返すのだろう。
返ってくる言葉はスタンプのようにおんなじで、
画面に映る文字列はひたすらに無機質だった。
それでも言葉がほしかった。
言葉に飢えていた。
なにか一言でもいい。私に言葉をかけてほしくて、電話もメールもたくさんした。
ときに、欲しい言葉はもらえなかった。
そんなとき、私の世界はいつもぐらぐら揺れていた。酸素不足のような、栄養失調のような、そんな感覚。
過去の彼の言葉を引っ張りだしては私は自分を慰めた。
そんな自分がひどく惨めで、私は余計に泣いてしまった。
そしてまた私はくりかえし問う。
「ねえ、私のこと好き?」
「好きだよ」と、彼が答えてくれるまでの数秒だけが、私の救いだった。