好奇心で生きてる

短編や書きたいことをつらつらと。

短編

トンカツLOVERS【短編】

私の目の前にいる友人は、はっきり言って変わっている。 クラスに一人はいる、『虐められたりはしないけれど、どこか浮いてる人』。そんな感じ。 そんな友人と『友人』の関係になったのは、忘れもしない、半年前のあの日ーーー。 「は……。急に呼び出したと思…

言葉の消費期限【短編】

言葉が腐るのはいつからだろう。吐き出された瞬間に、もうその言葉は崩れ落ちて、なんの意味ももたなくなるのだろうか。 「ねえ、私のこと好き?」「好きだよ」 そんなやりとりを、私はなんど繰り返すのだろう。返ってくる言葉はスタンプのようにおんなじで、画…

愛された日々は思い出の彼方【短編】

「愛しているんだ」あなたがそう、言うから。私は、「ありがとう、私もよ」と返して。ふたり、幸せになれると思っていた。 ねえ、あなた、私って結局、なんだったのかしら。長年あなたと連れ添った私は、目尻にシワもできたし、昔のように肌も髪もつややかではな…

ありふれた理由を重ねて【短編】

世界は愛で満ちている。世界はキラキラ輝いている。世界は楽しいことで溢れている。 どれもこれもが正解だ。どれもこれもが正しい。愛はそこらへんに転がっているし、キラキラと輝くものは多くて眩しいし、楽しいことで溢れかえった世界は今日も明日もその先…

缶珈琲と煙草と理由【短編】

幼い頃の記憶。祖父は、「孫との触れ合い」を超えた触れ方で、私に触れた。今でも鮮明に思い出すことができる。およそその「意味」を理解していなかった私は、祖父のするがままそれを受け入れていた。意味を理解していないながらに、「これは、家族には言ってはい…

親友【短編】

「私ね、先輩のこと本当に好きだったの。もう、私、人を好きになるのがこわい。」親友が言った。そう、大変な失恋をしたのね。「今は辛いだろうけど、いつかいい思い出になるよ」そんな、ありふれたことしか言えない私だけれど。「ありがとう。あなたが親友でよか…

銀色のメアリー【短編】

僕が愛しているのは、僕の家にいる「人型家政婦ロボットM-19」だ。僕の3歳の誕生日から15年間、ずっと僕のそばにいてくれた。仕事で忙しい両親よりも、ずっとずっと。僕はそのロボットを「メアリー」と呼んだ。3歳のとき、よく見ていたアニメのヒロインの名前だ…

深夜4時、「死」について。【短編】

「死」を意識したのはいつか。はじめて両親に連れられて行った映画館で、主人公にあっけなく殺される何人もの悪役を見たときか。曾祖母が亡くなり、その遺体の鼻にティッシュペーパーが詰められていたときか。長年一緒に暮らしてきた、ペットの犬を看取ったと…

冷たい指先から【短編】

「ごめんなさい。」と言ってみる。あなたは「もういい。」と言う。「ありがとう。」と言ってみる。あなたは「べつに。」とそっけない。「ばいばい。明日ね。」と言ってみる。あなたは「うん。」と少し寂しそうにする。 私、あなたのことがすきだったのよ。 「好き」ってな…