好奇心で生きてる

短編や書きたいことをつらつらと。

嫉妬【詩】

‪ああ、また私はこれに壊される。いつも胸に湧いてくるこれに壊される。私が一番嫌いな部分。私が私たる最たる部分。ああ、ああ、私は私を肯定している。肯定している私には、私を支配するものはいらないのに。苦しい。これはまた私を苦しめながら、私を殺していく。 ‬私の思考をすべて奪って殺していく。気持ちが悪い。これは私ではないと否定したい。できない。私は私を肯定しているから。湧き出ては私の中を蹂躙するこれこそが、私が私である証なのだと私は知っている。
‪鈍感でいられることがどれだけ幸せなことか。自分が今惨めであることに気が付かないことは、どれだけ幸福であろうか。‬私は今、私のこの「惨めさ」を気が付かずにいられるのであれば、愚鈍で構わない。ああ、今の私は、「愚かな私」を求める私は、なんと醜く浅はかな人間か。

こんな私だから、いつまでも、いつまでたっても、惨めなのだ。

冷たい指先から【短編】

「ごめんなさい。」と言ってみる。
あなたは「もういい。」と言う。
「ありがとう。」と言ってみる。
あなたは「べつに。」とそっけない。
「ばいばい。明日ね。」と言ってみる。
あなたは「うん。」と少し寂しそうにする。

私、あなたのことがすきだったのよ。

「好き」ってなに、と聞かれたら、私は上手に答えられないけれど。
たぶん、きっと、すきだったはずよ。
だって、夢にまで出てきては、私のことを泣かせるあなただもの。

ごめんなさいと謝るときも、ありがとうと笑うときも、明日ねと手を振るときも、ずっと、私、あなたがすきだったのよ。

すきだったはずよ。

なぜ、と聞かれて、上手に答えられる自信がなかったから、私。一度もあなたにすきなんて言わなかった。
あなたも、私にそんなことは言わなかった。
ときどき重なる視線とか、二人して笑いあったときとか、私、とてもすきだった。
あなたとの時間がすきだった。


さようなら、あなた。
白いシーツに顔を埋めて、泣き声を殺すあなた。
私の手を握ってくれるあなた。
心臓のあたりがぎゅうとなるのは、幸せだからかしら。
もうすぐ動きを止めるサインかしら。
それすらももう分からない私だけれど。

あなたの、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
目を閉じても、私はあなたの顔を想像できる。
想像したあなたの顔が、だんだんと霞んでいく。
あなたの声が、遠のいていく。
指先の感覚がなくなっていく。
あなたが触れているはずなのに。
あなたの手は、あたたかいはずなのに。

私、さいごのさいごまでやっぱり、あなたのことがすきだったと思うのよ。
「好き」ってなに。なにかしら。たとえば、私があなたと過ごした時間すべて。あなたが生まれてくれたこと。あなたがこれからも生きていること。あなたの記憶に、私が少しでも残ること。

目も耳も指先も、さいごまであなたに触れられたこと。

唇を震わせる。
「さようなら。」は言えなかった。
かすかに耳に届く音。
あなたは「            。」と。
…なんて言ったのかしら。もう、聞こえない。
もう二度と、あなたの声が。

あなたの声も、私、好きだったのに。